「広島の食材を中心に、日本全国の一流食材を探し出し、より有意義な会合になるよう、料理を考案していきました」。下井の言う一流とは、高級と同意ではない。例えば、広島といえば牡蠣が有名だが、実は牡蠣の養殖用ロープに付着したムール貝は廃棄されてしまう。そのほかにも高品質な食材が生産されているが、県外での知名度が足りていない。今回は、これらの食材も採用する。 「広島には、知られざる優良な食材が多くあります。それらを価値化し、一流に仕上げるのがシェフの仕事だと思っています」。昨今では、これをSDGsと呼ぶも、下井の想いはそれだけではない。「シェフは料理だけ作れば良いわけではありません。生産者や地域に光を当てることもまたシェフの仕事」と言う。 「今回のテーマは、平和。デザートの演出においては、日本の象徴である折り鶴を創作しました。平和とは、各国が融合し、調和することによって生まれると思います。その思想を料理にも反映させ、各所の食材や生産者を融合させた料理を提供しました」。この大規模なプロジェクトを完遂出来たのは、国内外に展開するプリンスホテルの規模感と人材、そして、常日頃から切磋琢磨し、積み重ねてきた時間があったからこそ。 「日本全国のプリンスホテルからメンバーを集め、ベストなチームを結成しました。今回の自分は指揮者のような存在。ゲストが幸福な時間を奏でられるよう、どうタクトを振って、シェフやサービスを心地良く活かせるか。今回の成功はチーム力の成果。そして、この事実を未来に残すこともまた、自分の役目だと思っています」。「G7広島サミット」をはじめ、「G7長野県軽井沢外相会合」、「G7札幌 気候・エネルギー・環境大臣会合」に供する料理の指揮を執ったのは、コーポレート エグゼクティブ シェフ 下井和彦。未来のために、その想いを記録に残す。Kazuhiko Shimoi15株式会社西武・プリンスホテルズワールドワイド コーポレート エグゼクティブ シェフ 下井和彦G7広島サミットを食で支える使命INTERVIEW
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